2015(平成27)年1月5日初稿/2017(平成29)年5月5日最終修正
職務中は、社会通念上(or「客観的に見て」)職務にふさわしい服装及び外見(or「身なり」)を整え、職務にあたること。
服装や外見については、「社会通念上」や「客観性」など、来社したお客さんや職場の同僚などから見る視点を柱とすることで、主観的な価値観をブロックしつつ、職務にふさわしい服装及び外見に絞って規定(=外見から認識できない部分はノータッチ)するのが無難と思います。
大阪市入れ墨訴訟のように、議論が「思想表現の自由」のテーブルに乗っかると、難しい面も出てくる可能性があるからです。
また、頭髪(髪型)、メガネ、口・舌ピアス、指先(ネイルアートなど)、地肌(刺青シールなど)など、(狭義には服装と言えない)服装以外の部分まで想定しておく必要もあるでしょう。「○○は服装ではない」などと屁理屈を許す可能性があります。
特に義務付けたいことや止めてもらいたいことを重ねて規定することは、合理的な内容(後述の判例に言うネクタイの着用義務など)であれば許容範囲ではと思われます。
服装や外見についての裁判例
「乗務員勤務要領」に基づき口ひげを剃ることの業務命令を出したハイヤー事業会社の例で、企業が合理的な規律を定める場合は従業員はそれに拘束されるものの、(口ひげをはやして勤務することが)企業経営への現実的な危険はもたらしていないとして、業務命令に従う必要はなかったとの判例があります(東京地判S55.12.15)。
また最近の判例では、就業規則において、従業員の基本義務として「勤務中は会社に認められた服装を着用する事」との規定があり、また、会社の業務は接客業であり顧客に失礼のない服装に努める必要があるとして、従業員に対し、社長名で男性社員のネクタイ着用を義務付ける旨の回覧を行っていた産業用縫製機器類の輸出入専門商社の例で、
事務室内で事務作業を行う職場に勤務する男性社会人の服装として、スーツ及びネクタイを着用するのは、今日の社会通念に照らすと一般的な服装ということができ、また、その規律はネクタイを着用するという抽象的な範囲にとどまり、具体的にいかなるネクタイを着用するかは従業員に委ねられていることからすれば、上記就業規則及びそれに基づくネクタイ着用の指示は、合理的な範囲内の服装を指示するものとして、これに反した従業員からの、懲戒処分の無効確認請求を棄却した判例があります(大阪地判H27.4.14-エリゼ懲戒処分無効確認等請求事件)。